桜桃二つ
太宰が
食堂で供された今日のおやつは果物で、夏
中島が格子に切った
「太宰さん、ここの席は空いてますか」
「空いてるよ」
と答えた声も機嫌がよかった。
中島は太宰の向かいの席に座った。
太宰は、ここのところの暑かったり寒かったりの気候や、雨振りのせいか、つい昼頃まではなんとなく憂鬱そうな様子であった。
(そんなに
と、中島は
仮説一、彼は赤いものが好きであるがゆえに
仮説二、人間己に似たものには心を
(特に太宰さんの後ろ姿)
目の覚めるような赤毛を丸く頭に沿うように散髪してあって、どう
「―――」
そこまで考えて、中島は
「なぁ、中島くんちょっと、見て、見て」
太宰が急に中島を呼んだ。
中島が顔を上げると、太宰は茎の根本がつながった二粒の
「中島くんがいたよ、ほら」
と言い、それを中島の皿の上へ置いた。
中島がへんな顔になって、首をかしげると、太宰はにやにや笑いながら人差し指を立てて中島の頭の天辺を指し、意味ありげにその指先を振って見せるのである。
(了)